2024年アメリカ・ヨーロッパ旅行の記事はこちらから(ニューヨーク4日目の記事投稿しました!)>>

【ブリスベン】「Air」展に行ってきた ‘Air’ Exhibition at GOMA(Gallery of Modern Art)

Air exhibition




気になっていた’Air’展に行ってきました。開催場所はブリスベンの近代美術館、GOMA(Gallery of Modern Art)。開催期間は2022年11月26日から2023年4月23日まで。ギリギリ間に合いました!

GOMA(Gallery of Modern Art)
住所:Stanley Pl, South Brisbane QLD, Australia
電話番号:07 3840 7303
https://www.qagoma.qld.gov.au

チケットは前日にGOMAのウェブサイトで予約。毎日、11時と13時から40分ほどのボランティアによる無料ガイドツアー(定員12名まで)があり、チケット購入時に予約することができました。

’Air’ Exhibition

当日は、まずボランティアによるガイドツアーで経験豊富なガイドさんによる説明に聞き入っていました。ツアーが終わってから再度、ゆっくり展示作品を見て周ることに。

GOMAの一階全体で開催されているこの展覧会。オーストラリア、世界各地からの30人以上のアーティストによる、目に見えない「Air」(空気)を題材にしたインスピレーションに満ちた作品は興味深いものが多かったです。また、この展示会を通して地球規模の環境問題に対する意識への問いかけが強く感じられました。

作品は5つの章に分けられていて、空気という目に見えないものに形を与え、空気への依存を探求しています。

5つの章:

  • Atmosphere
  • Burn
  • Shared
  • Invisible
  • Change

いくつかの作品を章別にご紹介します。

Atmosphere

太陽によって暖められ、生命を維持するための重要なガスが混ざり合った大気、それがわたしたちが呼吸する空気です。

『Origins I-III 2019』by Dora Budor, Croatia b.1984

地球が誕生したとき、わたしたちが知っているような空気は存在しませんでした。これらの3つのグラスケースの中に見る、火山の噴火でできた風景にまだ生命はありません。気が遠くなるような感覚と同時に宇宙の神秘に生かされていると感じます。

『Drift』by Tomás Saraceno, Argentina b. 1973

鏡面仕上げの球体、2つの異なる軽量素材で作られた作品です。持続可能な飛行技術への道筋を示しています。鏡面部分は太陽の放射線を反射し内部の温度をコントロールし、日中のオーバーヒートを防ぎます。透明部分は夜間、内部の温度を維持するのに役立ち、その結果浮力を発揮します。地表から放射される赤外線、太陽熱を保つことができます、なので化石燃料を使わず、地球の熱力学だけで動き、空中に浮かぶことが可能になるのです。

こんな乗り物に乗って空を飛ぶ(浮かぶ)体験してみたい!

Burn

『Ventilation System 1985-1992/2022』by Nancy Holt, United Sttates 1938-2014

わたしたちは普段、自分が呼吸している空気を意識することは少ないですが、換気口の近くに立つと、それを感じることがあります。『Ventilation System 1985-1992/2022』では、空気の動きに注目しました。COVID-19は、目に見えない脅威を伝える空気の能力を私たちに示し、私たちが依存しているつながったシステムに対する意識を高めてくれました。

コロナ禍のホテル選び、部屋毎のエアコン(全館集中管理タイプのエアコンではなく)がついているところを探していたことを思い出しました。

『Hot Spot 2006』by Mona Hatoum

今回の展覧会で特に印象深かった作品。赤いネオンで描かれた大陸は、非常時の赤い輝きのようです。『ホットスポット2006』は、エネルギーシステムであり、地図であり、模型でもあります。また、わたしたちがその檻の中に閉じ込められているようでもあります。

「ホットスポット」は、遠くの紛争地帯のこと、「他者」または「孤立」とみなされがちです。この作品のアーティストは、地球全体に熱の感覚を広げることで、この距離感を複雑にし、地政学的な紛争が私たち全員に影響を及ぼすことを示唆しています。戦争、病気、社会不安、構造的不公平など、権力闘争によって常に再定義されるこの地球全体が、ホットスポットであると提唱しています。苦しんでいる人々や自由がなく生きている人々の経験をギャラリーに持ち込み、社会意識を共有する空間を作り出そうとしているのです。

人類の歴史を通じて、地球儀は旅行、自由、発見の象徴でしたが、『Hot Spot』は配線され、危険で過熱している世界を示しています。地球温暖化が地球上のあらゆる地域に影響を及ぼしていると言われている今日、この作品は来るべき変化の前兆として、新たな環境的緊急性を示唆しています。

Shared

わたしたちは植物、木、藻類と空気を共有しています。わたしたちは呼吸をするたびに、これらの仲間によって作られた酸素を取り込んでいます。空気と生命は、地球上で共に進化してきたのです。

『Black Cloud 2007/2018』by Carlos Amorales, Mexico b.1970


アーティストの祖母の死がこの作品制作のきっかけとなりました。30,000枚の黒いレーザーカットと手折り紙の蝶 (5つのサイズ、30の異なる蝶と蛾)が壁にも天井にもびっしり張り付いていて、不思議さと不吉さをあわせ持ち、生命のはかなさを思い起こさせます。

また、このインスタレーションは、オオカバマダラ(マダラチョウ亜科に分類されるチョウの一種)が繁殖地である北米から冬眠地であるメキシコ中部の森林まで、年に一度の大移動をすることにも強い影響を受けたものです。オオカバマダラは現在気候変動によって深刻な脅威にさらされています。

オーストラリアでは、この作品は、春に南へ移動する際にキャンベラの国会議事堂にやってくる何千ものボゴン蛾の姿を思い起こさせますが、その数は現在壊滅的に減少しているのです。

このアーティストは、気候変動によって無脊椎動物の個体数が壊滅的な打撃を受けつつある現状を直視するよう、わたしたちに呼びかけています。

『Collection of air 2.12.1992 – 28.2.1993 1992–93』by Rosslynd Piggott, Australia b.1958


わたしたちが呼吸している空気を測定したり、「見る」機会はほとんどありません。が、このアーティストはメルボルンおよびヨーロッパ各地で空気のサンプルを採取しガラス瓶に詰めたコレクションアートでそれを可能にし、貴重で儚いものを形にしています。

訪れた思い出の場所の空気をとっておけたら…なんて素敵なアート!と思いました。

この作品では、65の異なる瞬間の空気を表現しています。丁寧に集められ、保存されたガラス瓶は、キャビネットの中の空気と、わたしたちが呼吸する常に変化する空気から分離されているようです。

Invisible

目に見えないものが私たちを不安にさせることもあります。COVID-19のパンデミックの初期には、目に見えない病原体を除去するために手の消毒に力を入れました。その後、エアロゾルの見えない広がりが研究されました。

この章では、わたしたちが気づかないこと、あるいは見ないことにしていること、たとえば他人の苦しみや機会の欠如についても取り上げています。

『In bed 2005』by Ron Mueck, England b.1958

2005年の作品ですが、COVID-19の時代にはこの作品は新たな意味を持つようになりました。パンデミックの間、私たちは引きこもりました。かつて休息の場であったベッドは、閉じこもり、孤立、療養の場となりました。

ロックダウンの途中で固まっているように見える。彼女は心配しているのか、恐れているのか、物思いにふけっているのか。彼女には見えていて、私たちには見えないものは何なのでしょう。

超現実的な彫刻を制作することで知られるこのアーティストの作品「In bed」は、映画やテレビ業界で人形作家として活躍した経験を生かし、心理的・肉体的に露出した被写体を表現しています。

この作品のサイズは161.9 x 649.9 x 395cmと、長さが6.5mメートル近くあります!人が一緒に写っている写真があるとわかりやすかったのですが、真っ白なリネンのベッドに横になっている巨大な女性、何回見てもドキッとしました。

『Plume 20 2022』Handcut digital photos 450 x 530cm Courtesy: Jemima Wyman, Milani Gallery, Brisbane, and Sullivan+Strumpf, Sydney
In memory of Mark Webb (1957–2022)

遠くから見ると、『Plume 20 2022』は、猛火から立ち上る一本の雲のように見えます。しかしよく見ると、何百もの別々の煙の雲をコラージュしたものであることがわかります。

争いの場の空気を探求。通常、空気は目に見えず無形ですが、空気が混雑ししばしば有毒であるように見えます。赤い照明弾、白い発煙筒、催涙ガスの黄色いスモッグが、この高くそびえ立つコラージュに集まっています。

作家はこの作品を、クイーンズランド州のアーティストであり教師でもあった故マーク・ウェッブ(1957-2022)に捧げています。

『Cloud Chamber 2020』by Yhonnie Scarce, Kokatha and Nukunu peoples Australia b.1973

『Cloud Chamber 2020』は、壊滅的な核爆発の後に立ち上がる原子雲の形がモチーフになっています。手吹きで作られたヤムイモの形をしたガラスが、まるで逆さになった雨粒のように空中に垂れ下がり光を取り込んでいます。

Cloud Chamberは、1953年から1963年にかけて南オーストラリアのマラリンガで行われたイギリスの核実験に対応するメモリアルとして構想されました。歴史的な写真をもとに、アーティストは人々に壊滅的な影響を与えた空気中の放射線の猛威を伝えています。

Change

わたしたちは大きな変化、曖昧さ、不確実性の時代に生きていて、まるで断崖絶壁の端にいるようです。

『Crossing 2016』by Anthony McCall, United Kingdom/United States b.1946

真っ暗な部屋に2つのダブルビデオプロジェクション(20分)。このインスタレーション『Crossing 2016』に足を踏み入れると、ゆっくりと変化する光の建築物に包まれます。空気は一瞬固まり、そして蒸発します。

広大な光のインスタレーションにおいて、劇的な可能性を秘めた空間として、ギャラリー内に保たれている空気の量に私たちの注意を向けます。暗闇の中で光の建築がゆっくりと展開される。白い光は2組のビームで床に投影され、一方ではほぼ完全な楕円と直線が、もう一方では楕円と曲線が一緒に踊っています。

波の音は、ゆっくりとしたヒューヒューという音や、深い呼吸の動きのように、空間の中をゆっくりと移動します。それは自然界から録音されたものではなく、ホワイトノイズから構成されています。わたしたちが目にする光の線と同じように、わたしたちが耳にするものもまた、抽象的なものです。

おわりに

久しぶりのオーストラリア、英語での展覧会だった(ここ5年ほど日本での展覧会鑑賞が多かった)のと、大切なテーマだけど暗い作品が多く見終わったあと体力消耗がすごかったです…。でも、Air(空気)を題材にしたインパクトある作品の数々はとても興味深く、色々と他人事ではなく自分事として考えなくてはと感じ、視野が広がりました。だから展覧会は楽しいです。

Air Exhibition、作品解説(英語)はこちらから。
https://www.qagoma.qld.gov.au/air-introduction/

Air展のあとは、GOMAで無料で開催されている、Courage & BeautyTransitionsA Third Languageの展覧会もさっと見てきました。